『四半世紀を経て復活する、ノスタルジーを超えた“未来”に向けてのファンタジー』

 『関西メタルなぐりこみギグ』。この言葉を目や耳にして甘酸っぱい記憶に酔うことができるのは、もはや社会生活のなかで充分すぎるほど苦い思いも味わってきた世代だろう。なにしろこのタイトルを掲げながら行なわれていた一連のライヴで新宿LOFTが酸欠状態に陥っていたのは、1983年のこと。筆者も例外ではないが、当時の若者たちは今や見事におやじ世代になり、新宿LOFT自体も同じ新宿内で移転してからすでに久しい。ちなみにその年、日本では東京ディズニーランドが開園し、“愛人バンク”が社会問題になり、TVでは『おしん』や『スチュワーデス物語』が人気を集め、細川たかしの『矢切の渡し』がレコード大賞を受賞。海の向こうではカレン・カーペンターが亡くなり、ポリスの『見つめていたい』が年間チャートの首位を獲得していた。
 それから四半世紀を経た2008年、かつて時代を築いてきた男たちが、ふたたび時代を揺さぶろうとしている。『JAPAN HEAVY METAL FANTASY〜関西なぐり込みギグ〜2008』。3月1日、この命題のもと、東京・中野サンプラザホールのステージ上に集結することになるのは、44マグナム、アースシェイカー、そしてマリノ。当時を知る人たちにとっても、あの時代を原体験できなかった世代にとっても、これはまさに奇跡に近い出来事といえるに違いない。
 それぞれの出演バンドがこれまでに歩んできた紆余曲折、そして何よりも肝心な「今、何故?」という疑問に関しては、これから先、当事者たちの言葉なども交えながらこの場で解き明かしていくことにしたい。が、とにかく重要なのは、かつて先駆者と呼ばれたこうしたバンドたちが、現在、それぞれにスタンスは異なれども、同じステージに現役のバンドとして立つことができる状態にあるという事実だろう。話は少々飛躍しすぎるかもしれないが、これは「日本のロックが、ロックのまま成熟期を迎えつつある」という事実を象徴しているのかもしれない。言い換えれば、「誰にもロックを卒業する必要がなくなった」ということでもある。
 1983年、アメリカでは『US フェスティヴァル』という巨大野外フェスが3日間にわたって行なわれ、ことにヴァン・ヘイレンやスコーピオンズ、ジューダス・プリーストやモトリー・クルーなどが出演したヘヴィ・メタル・デイは35万人もの動員を記録したといわれている。そして2007年、同じくアメリカのオクラホマの片田舎では『ロクラホマ』と銘打たれたフェスが初めて開催され、80年代の音楽シーンをにぎわせたメタル・バンドたちが“現役”として大集結し、きわめて優秀な実績を残している。
 日本でも、規模こそ違え、同じようなことが起きつつあるのかもしれない。たまたま時期を同じくして、前述のポリスが、再結成ツアーの一環として来日するというのもまた興味深い。2008年3月1日。結果としてその一夜がどんな意味を持つことになるのかは、まだ誰にもわからない。が、ひとつだけ確かなのは、これが単なる“記念”で終わるべきものではないということ。今、我々は、ノスタルジーを超越したファンタジーという名の“現実”の目撃者になろうとしているのである。  

増田勇一


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